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最高裁判所第三小法廷 昭和43年(行ツ)2号 判決 1968年6月25日

大分県別府市大字鉄輪六八五番地

上告人

鉄輪国際観光有限会社

右代表者代表取締役

山田いと

右訴訟代理人弁護士

太田博太郎

同県同市光町二二番二五号

被上告人

別府税務署長

梅本澄人

右当事者間の福岡高等裁判所昭和四一年(行コ)第一二号課税処分取消請求事件について、同裁判所が昭和四二年九月二六日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があつた。よつて、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人太田博太郎の上告理由について。

論旨は、原判決に税法の解釈に関する誤りおよび重大な事実誤認の違法があるというが、原判決には所論税法の解釈に関する誤りは認められず、事実誤認の主張は上告適法の理由にあたらない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 下村三郎 裁判官 田中二郎 裁判官 松本正雄 裁判官 飯村義美)

(昭和四三年(ツ行)第二号 上告人 鉄輪国際観光有限会社)

上告代理人太田博太郎の上告理由

原判決には左の通り民事訴訟法第三九四条の理由により破きされねはならない。

一 宇和島市立山田保育園の建設費中の金五百万円也は同市が郷土出身の成功実業家山田禎一に寄付方懇請したことに発端しその実現を見るに至つたことには争かない。

問題は寄付者か山田個人か上告人会社かその何れかとする点に在りその如何によつて本件課税処分の当否か決せられるのである。

二、被上告人は右寄付者は宇和島市よりその懇請を受けた当人である山田個人てあるとし、同人は法人の寄付とすれは指定寄付金として免税の特典を受けられることを奇貨とし上告人会社名義を藉りたものて当初宇和島市に差出された寄付採納願や送金名義か山田個人となつていることや同市か発行した寄付金領収証の宛名か山田個人となつていること等によつて証明されると主張するのてある。

三、反之上告人会社は同市より当初寄付懇請を受けた山田は当時自身之に応しられる力かなかつたのて同人か取締役として関係する上告人会社に之を取次いた結果最終的に宇和島市長、市議会議長、上告人会社々長との間に右寄付は上告人会社か引受けてなす事に決定し之に基き爾後の書類作成送金等の手続は上司の命を受けた市係員や会社番頭か一切取扱つたのてあるかその間上層部の話合て寄付者か山田個人より上告人会社に変更された経緯の説明か徹底を欠き下層部において漫然当初申入のあつた山田個人名義を以て事務処理する過誤を犯したものて、その後上告人会社は昭和三十八事業年度の法人税確定申告をなすに際し右寄付名義の誤りを発見し直ちに宇和島市に訂正申入をなし市も之に応したのてあつて本件寄付者は真実上告人会社てあり寄付名義を仮装したものてはない。

四、四回に分割して送られた金五百万円也は

乙第三、五、七、九、一〇号証によつて明かな通り

第一回の百万円中八十六万円也は上告人会社の伊予銀行松原支店の当座預金より引出され残り十四万円は現金支出

第二回の百万円也は全額前記預金より引出され

第三回の百万円中四十万円也は前記預金より引出され残り六十万円は現金支出

第四回の二百万円は訴外山一国際観光株式会社か別府信用金庫から手形貸付を受けた二百万円を上告人会社か借受けたものて何れも上告人会社の金と認められる。

又、上告人会社は昭和三十五年一月十二日本願寺に対し金百万円を寄付し之は昭和三十五事業年度法人税の確定申告に際し指定寄付金として損金算入したのか被上告人によつて異議なく容認されたか此寄付成立の経緯も本件と同様山田個人に対する申入か上告人会社に変更されたものなのてある。

被上告か斯る顕著な事実を無視か看過するかして上告人会社の寄付を仮装とするのは重大な事実の誤認を犯しているものてある。

五、近時相次いて摘発される業界の政党や政治家に対する多額の献金は出金に数倍否数十倍する見返り利益を目的とする貧慾な輩の政治献金に名を藉る贈賄て許し難いものてある。

反之本件の保育事業に対する寄付は些の見返も期待されぬのになす純然たる善意好意の結晶てある。

されはこそ税法は免税の特典を設けているのてある。

然るに被上告人の処分を見るに此寄付に対して二百万円以上の課税をしようとするものて全く人の善意を蹂躪し寄付の意慾を有する者をして寄付の上に追打される不当過重な税負担に思いを致して寄附を思い止まらせるに至ることを惧れるものてある。

六、以上の理由により被上告人の上告人会社に対する本件処分は徒らに寄付手続の書類に表われた名義上の過誤を捉えて右五百万円は山田個人か上告人会社から支給された取締役としての賞与金て之を山田個人か寄付した軽々に断してなしたるものて指定寄付金制度を認めた税法の解釈と事実の認定を誤つた不当違法なものてある。

斯る誤つた課税処分を正当適法と認めた第一審判決をその侭容認した原判決か誤りを犯していることは蓋し明白てあるから破きを求めるため上告に及んた次第てある。 以上

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